維新の章

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 だが、鉄次郎、恭平、その他多くの抗戦派の者たちの張り切りは、肩透かしに終わった。江戸城は無血開城となり戦を経ることなく新政府軍に明け渡されたのである。江戸の町は戦火は逃れたが、いわば不戦敗となった。  とは言え、旧幕府側には新選組をはじめ抗戦派の人間がまだ多く存在していた。そして、彼らを追って新政府軍がどんどん東へ向かってきているという事実は変わらなかった。  刻一刻と情勢が変わる中、鉄次郎と恭平は愚直に剣術の稽古を続ける日々を送っていた。この一大事に、自分たちの稽古は役に立つのか、立たないのか。答えの出ない問いについて二人は毎日のように話し合っていた。そんな折、彰義隊という旧幕府軍の一部が、上野に集まっているという情報を聞きつけた。    身分は問わず、戦う意志のある者は誰でも加われるという話だ。 「なあ恭ちゃん。新選組の試験には落ちたけどさ、あれから三年、俺たち頑張ってきたよな」 「うん。今度こそ、ご公儀の役に立てるよね」  二人は早速、それぞれの父親に彰義隊に参加する、という意思を示した。
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