維新の章

12/27
前へ
/45ページ
次へ
***   鉄次郎から大方の話を聞いた市之進は、眉間に皺を寄せ、うーむと唸っていた。四半時は経ってしまうのではないかと思えるほど長い時間だった。やがて、その重い口を開いた。 「新選組の時にも言ったが、真剣で生身の人間と斬り結ぶのだぞ。その覚悟はできているのか」 「もちろんです。私とて、武家の人間です。武士とは戦うことが本分でございます」 「何のために戦うのだ。上様は水戸へ移られた。お城ももう明け渡された。戦う理由はないだろう」 「しかし、事実新政府軍は今もこちらに兵を差し向けております! 父上は、この江戸の町が戦火に包まれてもよいとおっしゃるのですか? それに、やつらを食い止めなければ、いずれ水戸に攻め込むやもしれませぬ。そうなっては本当に徳川様はおしまいにございます!」 「いっぱしの口を利きおって。今度こそ、本当に斬られてしまうかもしれぬのだぞ!」 「父上は、私のことを信じていないのですか! 斬られる斬られるとおっしゃいますが、敵を斬って勝鬨をあげよと背中を押してはくださらぬのですか」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加