幕末の章

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「それでは、今日の稽古はここまで!」  久蔵の声がかかると、皆やれやれ、お疲れ様、とひと息ついて帰り支度を始めた。鉄次郎は先ほど最初の方しか読んでいなかった貼り紙を詳しく確認しに行った。入隊試験は三日後。その場で合否が出て、合格すれば試験から五日後には京へ向けて出発することになるらしい。  恭ちゃん、と声をかけ、鉄次郎は恭平と貼り紙を交互に見た。    「……俺、やっぱり受けようと思う」 「ええっ!? 本気?」  うん、と頷いて鉄次郎は恭平の目を見た。 「俺さ、剣術だけが生きがいだと思ってたんだ。小さい頃から恭ちゃんと一緒に稽古してきたし、なんか剣術やってるのが当たり前みたいな。けど、いくら剣術が好きでも、部屋住みのままじゃこの先何の役に立つのかわからないだろ? それが新選組に入ったら、今までの稽古が世のため人のため、将軍様のために、役立つかもしれないんだ。これって、千載一遇の好機だと思わないか?」
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