幕末の章

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「……鉄っちゃんはすごいや。決断力というか、行動力というか。でも、そうだよな。鉄っちゃんは、武士の子だもんな。国のために、働きたいよな」 「あ、ごめん、俺そんなつもりじゃ」  恭平は道場主の息子だが、浪人身分であり「武士の子」ではなかった。そのことを気にしているのをうすうすわかっていたはずなのに。鉄次郎は自分の失言を恥じた。 「よし! 俺も行く!」 「え、行くって?」  恭平の思わぬ発言に、鉄次郎は目を丸くした。恭平はニッと笑みを浮かべて「新選組の入隊試験に決まってるだろ?」と答えた。 「うん、それがいい。鉄っちゃん、一緒に京に行こうよ」 「でも、道場は? 継ぐんだろ?」 「父上はまだまだ元気だし、いざとなったら縫が腕の立つやつを婿に迎えるとかさ、いろいろあるだろ」 「縫の、婿……」 「もしもの話、先の話だよ! 今のところ縫に浮いた話なんて全然ないし、安心して」  ニヤリと笑った恭平に、鉄次郎はたじろいだ。どこまで見通されているのだろうか。コホンと咳払いをすると、話を本題に戻した。 「とにかく、明々後日(しあさって)だな。行くぞ、京の都へ!」 「うん、がんばろうね!」
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