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「「自分に自信がついたら必ず自分の想いをミコに届けるよ。」」
2人は同時に一語一句ピタリと揃った言葉を言うと、驚いて目を見合わせた。
「…ミコ、覚えてたんだ。」
「当たり前でしょ。自分に自信がつくのには随分と時間が掛かるのね。」
ミコは悪戯な笑顔を見せた。
「…ごめん。でも、今の僕はミコとは真反対なタイプだし、見た目も髪型もダサいし、それに…っ!?」
ハヤトの言葉の途中で、ミコは人差し指をハヤトの唇に当てた。ハヤトは緊張で心臓が飛び出そうだった。
「大事なのは中身じゃないかな?ハヤトは昔のハヤトのままでしょ?」
ミコはニコッと笑ってみせた。
「僕の中にはずっとミコがいて…ミコは記憶に無いかもしれないけど、ミコはいつも僕の部屋に来ては漫画を楽しそうに読んでた。僕は漫画を読みながら微笑んでいるミコの横顔が好きで…。」
「それって…漫研に入ったのも私が影響してたの?」
ミコの問い掛けに、ハヤトは目を逸らしながら頷いた。
「じゃあそれも愛なわけだ!」
「え、あ、愛…。愛か。」
『愛』なんて言葉、自分とは無縁だと思っていたハヤトは顔を赤くした。
「それで…ハヤトの想いってのはいつ届けてくれるの?」
そう問い掛けたミコ自身、緊張からか身体を震わせていた。
「今…って言いたいけど、もう少しだけ待って。」
「もう少し?」
ミコは少しシュンとした表情を見せた。ハヤトは自分を鼓舞し、ミコに一歩近付いて、目をじっと見つめた。
ミコはそのハヤトの視線にドキッとして固まった。
「僕は今から生意気なことを言うね。」
ハヤトの声は震えていた。
「僕はずっとミコと話したかったし、昔みたいに仲良くしたかった。努力もしない僕が何言ってるんだって思うと思うけど…僕はこれから変わる!ミコと並んで歩けるような男になる。この何年ものミコとの空白が、今の短時間で埋まった気がするんだ。あの中一の僕の宣言の時に戻れた気がするんだ。だから、あと少し時間が欲しい。君を手に入れるために最大限の努力をしたい。」
ハヤトは頭に思い浮かんだ言葉を一気に吐き出し、最後は息切れしていた。
「…馬鹿。」
ミコは小さく呟いた。
「え?」
「もう、最後の言葉なんか告白そのものじゃん。」
ミコは涙を拭った。
「分かった、待ってる。でも、これだけは言わせて。私はハヤトの中身が好きなんだからね。それに…だいたい、努力したとしても素材には限界があるからね。」
ミコはまたからかうように笑いながら言った。
「ふ、ふん、分かってるよ、僕がイケメンじゃないくらい。」
「フフ、既にハヤトの想いは届いてるけど、直接言ってくれるの待ってるね。」
ミコはそう言って、さっきハヤトの唇に当てた人差し指を自分の唇に当てた。
顔を赤くし固まったハヤトに、ミコは笑顔で手を振ると、振り返って自分の家を目指して歩き出した。その瞬間、ミコは顔を赤くし溢れてくる笑顔を抑えられなかった。
「…半年待って何も無かったら、私から届けるからね。」
ハヤトのことをよく分かってるミコは、ぼそりと呟いた。
ー fin ー
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