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「ねぇ、ミコさぁ、隣のクラスの橘って昔からの知り合いなの?」
「え?橘ハヤト?」
「下の名前は知らないけど、多分それ。」
「知り合いというか家が近所だから幼なじみというか。でも、もう何年も話してないよ。」
「だよね~、ミコと真逆の陰キャラって感じ。部活も漫研みたいだし。」
「…あのさ、突然何?何で急にハヤトのことを。」
私の問い掛けにユウコは私の後方を指差した。
今は高校帰りに親友のユウコとファストフード店でハンバーガーを頬張っていた。私はユウコの指差す方に振り返ると、テーブル2つ離れた位置にハヤトがいた。ハヤトは私たちに気が付いているのかは分からないが、何かを真剣にノートに書いていた。
「前に誰かに聞いたんだよね。ミコとハヤトが知り合いだって。もしかして、昔付き合ってたとか?」
「ないない!絶対ない!」
「ハハハ、ミコ必死すぎ。分かってるって、釣り合わなすぎだもん。」
ユウコは笑いながらナゲットを頬張った。
…ハヤト、そいや久しぶりに見たかも。昔はあぁじゃ無かったんだよな。今はボサボサの頭に眼鏡掛けちゃって、すっかり陰キャラ化しちゃってさ。まぁ、ハヤトも私が変わったなって思ってるかもしれないし、お互い様か。
「…ねぇ、ミコ。」
「え。」
「振り返って橘のことじっと見過ぎじゃね?」
「ふぇ?あ、いや…。」
我に返った私は残りのハンバーガーを一気に口に入れて、ジュースで流し込んだ。
ユウコはバイトの時間になるとハンバーガー屋から出ていった。
「私も帰ろ。」
私はゴミを手にして立ち上がりながら、チラリとハヤトを見た。
「っ!!」
ハヤトも私を見ていて目が合ってしまい、私は慌てて視線を逸らした。そのままゴミ箱にゴミを捨てると急いで店を出た。
「ふぅ。」
…てか、何で私がこんな照れた感じにしないといけないのよ。私が意識してるみたいじゃない。
私は少し不貞腐れながら家路についた。この道を帰ると、私の家より先にハヤトの家がある。私はバスケ部で帰りも遅くなることが多いし、朝練もあるからハヤトと登下校が重なることは無かった。
そして、今そのハヤトの家の前を通り過ぎる。
「昔はよくハヤトの家にも遊びに行ったなぁ。」
気が付いたら足が止まっていた。
「…ミコ?」
背後から私を呼ぶ声。
久しぶりに呼ばれたけど、声の主は直ぐに分かり、私は固まって振り向けなかった。
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