Rewind 〜想いは消えない〜

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ー 巻き戻し ー …ずっと楽しそうに話してるなぁ。 僕は文化祭に向けて漫研の作品を仕上げる必要がある。腹ごなしをしながら集中して取り掛かろうと思ってファストフード店に来たが、何処からか聞き覚えのある声がして、ふとその方向を見るとミコの後ろ姿が目に入った。 …一緒にいるのは呉地(くれち)か。僕、ああいうギャルっぽいのは見た目も性格も好みじゃない、というか単純に僕とは合うことは無いと思っている。ミコは、見た目はギャルとまでは行かないが、ああいう子たちとよく一緒にいるのを校内でも見かけるし、やっぱり僕とは真逆のタイプなんだろうな。 僕はミコたちには気が付いていない素振りでいこうと決め、漫画のネーム用ノートの続きに集中した。 「…橘…」 …ん?僕の名前が今出なかったか? 「橘ハヤト?」 …今度はミコの声だ。間違いなく僕の名前だ。何だ何だ、悪口か? ノートに視線を向けているが全く作業は進まない。ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ顔をうつ向かせたまま、ミコを見ようとしたが、何故だかビンビンに視線を感じて一瞬でも見ることが出来なかった。 …何で僕は、こんなにコソコソしてるんだろ。 ミコとは小学生までは本当によく一緒に遊んだよな。中一の夏辺りから段々と距離を置くようになったけど。あれは、ミコがバスケを始めたのもあったし、徐々に男女ってものを意識し始めていたんだと思う。当たり前といえば当たり前なんだけど、僕は物凄く寂しかった。 …そいや、中一の時にミコに何か宣言したような。あれ、何だっけかな。…まぁいいか。もうミコは僕のことなんて何とも思ってないだろうしな。 「じゃあね、ミコ。」 「うん、バイト頑張って。」 …呉地の声、あいつは確か夕方コンビニバイトしてるってデカい声で話してるのを聞いたことがある。じゃあミコも帰るよな…。 「っ!!」 ふと視線を上げたらミコが僕のことを見ていて目が合ってしまった。僕は咄嗟に視線を逸らして、ここに来た時から一向に進んでいないノートに何かを書くフリをして誤魔化した。 …駄目だ、もう集中出来ない。家でやるか。 僕が再びチラリと視線を向けた時にはミコの姿は店内に無かった。僕は残りのポテトを食べてから店から出て、家路についた。 …何だか、こんなにミコと近かったのは物凄く久しぶりだったな。目が合うなんて尚更…。 ミコは昔は優しくてしっかりしていて、情けない話だけど僕が守られてばっかりだったな。 僕はずっとミコのことが好きだった。 …いや、過去形なのか。 今のミコは昔と比べると垢抜けた感じがして、僕からは遠い存在になっていた。でも、さっき見たミコの目は、昔と変わらなかった。僕の好きなミコのままだと感じた。 そんな事を考えて歩いていたら、あっという間に家の近くまで来ていた。 「はぁ、今日中にネームを仕上げないと…っ!?」 な、何だ?何でミコが僕の家の前に立ってるんだ!? 僕は一瞬で淡い期待を頭に描くと、大きく深呼吸をしてからゆっくりと近付いた。ミコはまだ僕の存在には気が付いて無さそうだ。 「…ミコ?」 勇気を出して声を掛けたが、ミコは僕に振り向かなかった。
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