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「ミコだよね?」
もう一度声を掛けられた私は振り向くしかなかった。
「…そうよ、久しぶりに話したね、ハヤト。」
私はハヤトの目を見ることができない。
「その…久しぶりに話せて嬉しいよ。」
「え。」
何だろ、自意識過剰なのかな。私と話したかったってことだよね。きっと私、顔赤くなってると思う。
まだハヤトの目は見れない。
「僕は、ミコの存在をずっと意識してた。でも、知らない内に住む世界が違うと言うか…まぁ僕がいけないよね。漫研とか入ってる男嫌だろ?」
「…そんなこと…ないよ。」
私は決意してハヤトの顔を見た。ハヤトはじっと私を見つめていた。
「…私はハヤトと話したいと思ってたんだけど、その周りの目を気にしすぎて…。」
「言いたいことは分かるよ。」
ハヤトは微笑みながら答えてくれた。
そう、私はハヤトと話したかった。ハヤトの見た目や趣味が変わっていくことに私は別に嫌悪感を抱いたことは無かった。でも、周りの子たちからハヤトの悪口にも近い言葉を聞くと、私は自分のためにハヤトと距離を置くようになっていた。そして、それが長く続いていつしか私の中からハヤトの存在が薄れてしまっていた。
「…ごめんなさい。」
「何で謝るの?」
「だって…私、自分の気持ちにずっと蓋してた。周りの目ばかり気にして。私は皆が知らないハヤトの良いとこいっぱい知ってるのに。…卑怯だよね、私。」
私は自然と涙を流していた。
「…今からでもやり直せないかな?」
ハヤトはそっと手を差し伸べた。
「今思い出したんだ、中学生になった時にミコに言った言葉を。」
私はその言葉を聞いて胸がドキッとした。
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