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ー 巻き戻し ー
「ミコだよね?」
僕はもう一度声を掛けてみた。これで逃げられても、怪訝そうな顔で振り向かれても後悔はない。今できることをしたかった。
すると、ミコはゆっくりと振り向いた。
「…そうよ、久しぶりに話したね、ハヤト。」
僕のことを見てはくれない。でも、嫌そうな表情ではない?…僕の自意識過剰だろうか。
…もうこのままいけるとこまでいこう。勢いのままに。
僕は勇気を更に振り絞った。
「その…久しぶりに話せて嬉しいよ。」
「え。」
…今の「え。」はどんな「え。」なんだろ。後ろに隠れている( )書きの部分を教えて欲しい。
やっぱり僕の目は見てくれない。
…ここで僕がやめたら、きっとミコはそのまま帰ってしまうだろうな。
僕は喉が渇ききっているのが分かった。心臓も破裂するんじゃないかと思うほどの鼓動を打っていた。
…でも、言おう。
「僕は、ミコの存在をずっと意識してた。でも、知らない内に住む世界が違うと言うか…まぁ僕がいけないよね。漫研とか入ってる男嫌だろ?」
僕はミコの反応が怖くて目を閉じた。
「…そんなこと…ないよ。」
…え?
予想外の優しい声での答えに僕は目を開けた。ミコはじっと僕を見つめていた。
「…私はハヤトと話したいと思ってたんだけど、その周りの目を気にしすぎて…。」
ミコの目が潤っている気がした。
嬉しかった。
「言いたいことは分かるよ。」
きっと今の僕は、嬉しさが溢れた表情をしてるだろう。
僕はずっとミコと話したかった。自分でも分かってたんだけど、どんどん周りから取り残されてくようなダサさは、ちゃんと理解していた。それとは反対にミコは、垢抜けていって僕から遠いグループの子たちと仲良くなっていた。
きっと、僕が話し掛けたら、ミコは迷惑するだろう。ずっとずっとそう思って、僕の頭の中からミコの存在を消そうと努力してきたんだ。
…でもやっぱり無理だよ。
ミコは見た目は変わっても中身は昔のままのミコ。僕の好きなミコは、そのままだった。
「…ごめんなさい。」
…え?
「何で謝るの?」
「だって…私、自分の気持ちにずっと蓋してた。周りの目ばかり気にして。私は皆が知らないハヤトの良いとこいっぱい知ってるのに。…卑怯だよね、私。」
…卑怯なのは僕だよ。僕はミコと釣り合う努力をしなかった。ミコにとって恥ずかしくない存在になる努力を怠ってるくせに、僕はミコを手にしたがってる。卑怯だよ、僕は。
ミコは泣いていた。
「…今からでもやり直せないかな?」
僕は一世一代の思いを述べながらそっと手を差し出した。そして、ミコの涙を見た瞬間、脳裏に蘇った。
「今思い出したんだ、中学生になった時にミコに言った言葉を。」
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