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 次の週の朝、学園に行こうかどうしようか迷っているルルーシアのもとに手紙が届いた。  封蠟は王家のものだったが、アマデウスの個人印ではない。  ルルーシアは初めて見るそのデザインに戸惑いを覚えていた。 「この印はどなたかしら。王家というのは間違いないけれど」  ペーパーナイフの先で封蠟を割ると、ふわっと花の香りが鼻腔を刺激した。 「まあ! 王弟殿下からだわ」  その手紙には王太子殿下のスケジュールがびっしりと書かれていた。  学園に行かない日とその理由を読みながら、ルルーシアが呟く。 「王弟殿下にはアマデウス様と会う決心がつかない私の心がわかるのかしら……」 「どうしたんだい? ルル」  ルルーシアは手紙をそのまま父親に渡した。 「なるほど、どうやらキリウス殿下は君の味方のようだ。どうする? ルル」  ルルーシアは暫し考えた後、父親の顔を見た。 「学園でお会いするより、我が家でお話しする事から始めた方が良いような気がします」 「そうか、ではそのようにしようか。なに、どうせ今日もやってくるだろうから、アランとアリア嬢にも同席してもらいなさい。私はいない方が話しやすいだろうけれど、辛くなったらすぐに呼ぶんだよ? 叩き出してやるからね」 「はい、お父様。アリアはきっと今日も来てくれるでしょうから、同席してくれるように頼んでみますわ」  その日も休むことにしたルルーシアは、教科書を見直したりして時間を過ごした。  ふと時計に目を遣ると、いつもならアリアがやってくる時間になっている。 「お嬢様、アリア様がおみえです」 「わかったわ、ここにご案内してくれる? それといつもの準備もお願いね」 「畏まりました」  入ってきたアリアはいつもより元気がない様子だ。 「どうしたの? アリア」 「マナーは満点なのよ。歴史も問題なし。母国語も外国語もお墨付きを貰ったわ。でも数学が……」 「数学? では経営学も分析学も?」 「そういうこと」 「前途多難ってわけね。どこかしら? 私で力になれるならなんでも聞いて」 「そうよね……あなたはこれよりもっと高度な内容をクリアしてるのよね。ホントに尊敬するわ。その上で刺しゅうや芸術や音楽もでしょう? どんな頭してるの?」 「どんなって、こんな?」  ルルーシアがお道化て自分の頭を指さした。 「小さいのにぎっしり詰まっているのね……私にはどうやら隙間があるようだわ」  スイーツとお茶が運ばれてくる前に、部屋をノックしたのはメリディアン侯爵だった。 「あのアホが今日も来たけれど、どうする?」  ルルがその言葉に吹き出しながら頷いた。 「久しぶりにお会いしてみます。アリア、付き合ってくれるでしょう?」 「もちろんよ」  ルルーシアより先に立ち上がったアリアの鼻がフンスッと鳴った。  階下に降りると、ペチュニアの花束を抱えたアマデウスが立っている。 「ようこそ、殿下。お久しぶりでございます」 「ああ……ルル……会いたかったよ。嬉しくて泣きそうだ」 「まあ殿下ったら、大げさですわ」  王太子の横に立っていた侯爵が口を開いた。
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