届けたいもの

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20歳そこいらの僕がいろんなラーメンを食べ歩いたと言ってもたかが知れているけど 味噌そばはどことも違って大きなものを感じる。 店長の優しさ、人柄、素朴さ、シンプルでかつ大胆なあんかけとネギのハーモニー。 「店長、何か思い入れみたいなものがあるんですか?」 賄いの味噌そばを食べ終えて店長に思わず聴いた。 先日の無礼を気にして少し話しづらかったが店長は笑顔で気さくに話してくれた。 「特にはないよ」 その一言で僕は他のも苦労して修業して作ったんだからちっとは味わえって暗に言ってる気がした。 それでも僕は賄いの注文を変えなかったが。 目ぼしい求人がなく仕方なしに始めたので初めはやる気が無かったけど、賄いの味噌そばの存在を知ってからはグンとやる気が上がった。 出前持ちで自転車を漕いで行くのは恥ずかしかったけど味噌そばは、ずば抜けて美味いし 「日本一のラーメンをお届けする」 と思うと誇らしく思え、やりがいもでる。 何でこんな事俺がしなきゃならないんだろう と思ったことも笑顔でこなすようになり 「あんたが来てから売上が上がったよ」と奥さんから言われた。 当時ラーメン屋のドラマ(長渕剛)が流行ったのもあって近所でちょっとした人気者になった。 ただ先生が注文した中学校に行くと生徒が冷やかしてくるのが嫌だったけど。
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