届けたいもの

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餃子を作るのが店長の奥さんの仕事だった。 店長がたまに来る女性客に愛想よく話しをしていると 「やあね、鼻の下伸ばしちゃって」 と餃子を焼きながらやきもちを焼いている。 店長はオタマをカンカンと言わせながら野菜炒めをひっくり返し 「別に鼻の下なんか伸ばしてないよ」 「そう?随分あのお客に馴れ馴れしいんじゃない」 「商売だからしょうがないだろ!」 オタマの音を強め言い返す。 掛け合いがラップみたいで面白いけどたまーに本気で怒ってしまうと奥さんが店に出て来なくなってしまって、店長が不機嫌そうに餃子を焼いていたりする。 そういう時僕は嵐が去るのを待つばかりだ。 そんなある日、 ラーメンをモバイル化しましょう。 ラーメン通信協会の名刺を店主に差し出し、背の高い肩幅の広いスーツにシワ1つないシャツのホログラムからでてきたような男がまるでそれが当たり前のことのように言ってきた。 「携帯電話の基地局は今やほとんどの地域で設置されています。それに便乗してラーメンを電波化してみませんか?」 「はあ?」突然の申し出に戸惑う店長と奥さん。 「月々1000円で電話で注文を受けたお客様に出来たてを提供できるようになるのです」 「どうしてそうなるのですか?」 さっぱり意味がわからず眉間にシワを寄せる 夫婦。 「流しそうめんと同じ理屈ですよ」 「流しそうめんねえ」 その話を聞いていた息子が 「オヤジ、面白そうじゃん!やろうぜ、流しそうめん!」 この息子の大学進学もあり、店の売上をどうしても上げたかったのでラーメンを通信化してみることにしたのだった。
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