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 航空自衛隊松島基地とも連絡を取った。まあ、あちらの方が監視体制もきちんとしているから大体のことは把握しているだろうと思っていたが、やはりそうだった。ヒトガタ本土上陸に備えるよう頼み通話を終えるとナライ君が「うわあ駄目だ」と声を上げるのが聞こえた。  見ればヒトガタは白っぽい肌を所々黒くしながら海に戻ろうとしていた。斧を脚に突き刺したままのナライ君が海に引きずられていく。マサムネさんは左右に開く顎で右腕に、ミナトさんは左腕に縋りつきヒトガタの上げる飛沫を背中の蝋物質で蒸発させている。石森さんが新しいスーツでライフルをどこからともなく出現させるとカモシカの時と同様に躊躇いなく引き金を引いた。背中に命中したが、やはりヒトガタは止まらない。監視台を下りようとする石森さんを俺は止めた。 「石森さんは行かない方がいいです」 「ヒトガタを止める」 「石森さんは首から下は人間です。あの三人とは違う」俺は言った。「これ以上命を粗末にしないでください」  石森さんは一瞬だけ下を向くと「船を出す」と言って監視台を下りた。ヒトガタは海水を赤くしながら三人を引きずって沖に出ている。俺は松下から預かった鞄を抱えて監視台を下り、コンクリートに横たわる松下に駆け寄った。
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