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 西暦二〇七五年度の入庁式にヤベー奴がいた。パッと見た瞬間からわかるくらい、ヤバさが溢れ出していた。  管財課の佐久間さんが「あれ、見える?」と言ったので俺は吹き出しそうになった。あれ別に、一部の人にしか見えない幽霊的なやつじゃねーから。 「俺さっきあいつとトイレで隣になったんだけど」と口を開いたのは健康推進課の勝又君だ。「なんかすげーヒューヒュー言ってた」 「呼吸的な?機械音的な?」俺は訊いてみたが彼は「わからん」と首を横に振った。 「どこの課の人なんだろうね」 「というかあれヒトなのか?」 「人工生命体じゃない?知らんけど」 「俺結構人工生命体調べたりしてるけどあんな奴知らねーよ」 「うちの課だったら嫌だなあ」俺は呟いた。とか言って、俺の上司だったりして。  入庁式を終えて、佐久間さんと勝又君の三人で連絡先を交換し合い、その場は解散した。  管財課も健康推進課も同じ本庁舎の中にある。いいなあ。俺は指定怪奇種対策庁宮城局の所属だ。本庁から徒歩十分の山の上に局舎がある。もう少し話したかったが、局長に「大泉君」と呼ばれて仕方なくふたりと別れた。 「お疲れ。じゃ、行こうか」 「はい」と答える俺。視線は自然と局長の背後に向く。 「あ、彼のことはまた後で詳しく話すから」 「あ、はい」  いや、今説明して欲しいんだけど。
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