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 真っ赤なフルフェイスヘルメットを被り、首から下はスーツ姿。ヘルメットには数本の管が繋がっていて、何やら黄色っぽい液体が通っている。そして、勝又君の証言どおり、ヒューヒュー言っていた。確かに呼吸音か機械音かは判別がつかない。  そんなヤベー奴は、局長が歩き出すとその背中について歩いた。俺はヘルメットの管の先、ヤベー奴が背負っているリュックのようなものを見ながら歩く。エレベーターに乗り、四階で下りて、立体駐車場に出る。  当然周囲の視線は釘付けだ。特に今年度採用された職員はその目に怯えがありありと浮かんでいる。正直俺だって怖い。何か変なにおいとか漂ってきそうで鼻から息ができないし、ヒューヒュー聞こえる音にも耳を塞ぎたい。目を合わせないように少し俯いて歩いているが印象を悪くしたくないので局長の言葉にはできるだけ明るく答える。早く時が過ぎ去れと思っている。  徒歩十分の坂道。車で走れば五分ほどか。途方もなく長い時間に感じた。公用車の運転は局長。後部座席に俺とヤベー奴。背負っていた謎のリュックは背中から下ろして抱えている。脚がパタパタ動いている所だけがやけに子どもっぽくて気持ちが悪い。  何なんだこいつ。ヒト型ではあるが、ヒトなのか?何故ヘルメットを被っているのか。そのチューブで何を流し込んでいるのか。そして、そのヒューヒュー言っているのは何の音?
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