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 そう。俺は面接でそう言った。初対面でも緊張なんかしない。友達もたくさんいる。入庁式で話した勝又君と佐久間さんも、会場の席の両隣だったから話し掛けてみただけで、別に顔見知りではなかった。中学時代は不登校児と仲良くなって登校させるまでに至った。勉強の暗記は苦手なのに人の顔と名前を覚えるのは得意。一卵性の双子もバッチリ見分けられる。「人たらし」などと呼ばれることもしばしば。  まあ、裏を返せばそれ以外特に長所もないということなのだが、公務員試験ではそんなコミュニケーション能力をとにかくアピールした。結果、こうして石巻市の指定怪奇種対策庁宮城局に採用されている。  この流れ、あれだな。勘の鋭くない俺でも流石に気が付いた。局長は言った。 「石森君と仲良くしてやってくれ」  入局初日。俺は「はい」と答えるほかなかった。
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