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……どうしてこうなったのかな。と。たくさん考えたけれど、結局よくわからなかった。
植物は、植物だ。
いかに害になるものが多いとは言っても、所詮は植物なのに。
しかし三日前に対処しようとした植物の凶悪さは度を超えていた。
ありえない。
そう断言できるくらい、常識を超えた危険なものだった。
グラスハンターの死亡数が、ちょうど三日前に急激に跳ね上がった。そういうニュースが流れていて、津田はそれを傷病患者を入院させるための病室で聞いている。
この数日間。
グラスハンターたちの組織内で、何やら怪しげな空気が流れているらしいと聞いた。
陰謀が進行しているのではないか。人類を裏切ったやつがいるのではないか。どこかで行われた秘密の実験か何かがあって、その失敗のあわを俺たちが食わされたのではないか。
……なんにせよ。と。津田は思っている。
舟山の仇は取らなければならない。
植物の凶悪化の謎を解き明かす。
もしもそこに、一連の悪夢を引き起こした黒幕が存在するなら炙り出す。
それが、今の自分にできる仕事である。
そう、思っている。
————と。
ガラリと病室のドアが開き、スーツに身を包んだ誰かが入室する。お見舞いだ、と気づいた。津田の後輩の青年が、おずおずと近づいてきて、何かを差し出す。
……あの。舟山さんの、葉っぱ……なんですけど。
後輩は、緊張しながら、一生懸命に話している。
舟山さん、その………死んで、植物になって……。もちろん回収されてるんですけど……でも、その葉っぱが、津田さんあての手紙になってるっぽくて。それで。だから津田さんに届けようって、その、僕の自己判断で、こっそり抜き取って……
なるほど。そういうことか。
ありがとう、と津田はお礼を言った。
届けてくれてありがとう。
そして半泣き顔の後輩から、それを受け取った。
「………。」
後輩が退室するのを待って、葉っぱを開く。
死んで植物に転じた舟山から生えてきたという、一枚の葉っぱ。『津田へ』の宛名が、細い葉脈のように浮き上がっている。しかしそれの中身に書かれていたのは、後輩が思っていたような津田への手紙文でもなんでもなく……
「なるほど。クロスワードパズルか。」
あいつらしい。
津田は、顔を上げて辺りを見回した。ペン、ペン……あぁ、あった。ベッドサイドテーブルから一本のボールペンを取り上げて、その葉っぱに向き直る。
唇をぺろりと舐める。
津田は、恋人が遺したクロスワードパズルを解くことにした。
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