1 有能メイドは移動だなんて聞いていない

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「危険、ですか?」 「ああ。互いに多くの魔力を持つ二家が全面戦争でも起こしてみろ。国全土を巻き込む大戦争だ」  魔力同士は、互いに反応・融合するため、思いもよらぬ被害を及ぼすこともある。  扱いを間違えればとてつもなく危険な魔力を膨大(ぼうだい)に持つ者同士が全力で魔力をぶつけ合ったら……。  国全体が焦土(しょうど)と化す。 「……軽率な質問でした。恐ろしいですね」 「そうなの。ですから、関係が悪くなったら、そこで接点を持つのをやめていたのです。いつ争いが起こるかわからないので」 「そうなのだ。おや、話をし過ぎたか。もうマグヌス家の城が見える」  レガリス様の言葉につられて窓の外を見ると、小高い丘の上に、それはそれは立派なお城が建っていた。 「あれがマグヌス家の本家ですか?」 「そうです。相変わらず派手な城だこと」  はあ、とレジーナ様はため息をついたけれど、私は結構好きだ。  白いレンガが積まれた壁に、チョコレート色の門。窓には、大きなステンドグラスがはまっている。まるでおとぎ話に出てきそうなお城である。 「到着いたしました。どうぞ」  御者の方が馬車を止め、扉を開けてくれる。 「うむ」 「感謝しますわ」 「あ、ありがとうございます」  膝の上からカバンを降ろすと、御者の方はそれを持ってくれた。 「あ、大丈夫です、自分で持てます!」 「いえ、マグヌス家へ移動されるとのことですので、私からしたらもう別家の方。つまりはお客様です。お客様にはおもてなしするのが私の仕事ですので、お気になさらずにどうぞ」 「イリス、行きましょう」 「レジーナ様、すみません。すぐに参ります!」  そっか……。私はまだファイ家の者のつもりだったけど、みんなからしたら、私はもう別家の使用人なのか……。  少し寂しくなったけど、きっと大丈夫。マグヌス家でも、居場所を作ってみせる!
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