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コンコンコン、とリズムよく扉を叩くと、返ってきたのは「誰だ」という不機嫌な返事。
「ルナール様、おはようございます。イリスです」
「ん……入れ」
開かれた扉をくぐると、後ろでぱたんと扉がしまった。
「何の用だ、チビメイド」
例の分厚い本を片手に、ふわふわした、やわらかそうな一人掛けのソファに腰を下ろしていた。
よかった、気まずくない。
私はカーテシーで挨拶をし、彼に質問を投げかける。
「一つ、魔術に関する提案がございます。ルナール様は、インクを透明にすることは可能ですか?」
「……詳しく聞かせろ」
私の質問に興味を持ったらしいルナールは、組んだ両手に顎を乗せ、面白そうに口元を緩めた。
私は昨日思いついたことを簡潔に伝える。
「つまり、お前は昨日作ったインクを透明にしたい、ということだな」
「はい」
「面白そうだ。試してみよう」
ただし。ルナールは言った。
「少し時間がかかる。変化させた魔術を成功するまで試すのには、一日はかかるだろう」
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