5 有能メイドは魔術の練習に付き合わされる

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 以前、ビビが魔術の改編はとても難しい、と教えてくれたことがある。既存の魔術に手をくわえると何が起きるかわからないし、思った通りの魔術にならないことが多いのだ。 「ゆっくりとて問題ありません。私がお頼みしましたので」 「そうなのだが、その……」  ルナールは指先で自身のふわふわしっぽを弄りながら、唇を尖らせる。 「実験……協力、しろ」 「え」 「それは嫌か?」 「いえ、そんな! 逆によろしいのですか!?」  これは純粋に嬉しい。過程を知らずに、はい、って透明のインクを渡されたら、どうやってやったのかが気になって眠れなくなりそう。 「いい。なら始める」  どこか嬉しそうなルナールが、例の分厚い本とノートを取り出し、ぺらぺらとページをめくる。 「色を変える魔術ならある。それを、色をくわえる魔術にした上で、新たに透過させる魔術を組み込めば成功すると思う」 「む、難しそうですね……」 「確かに難易度が高く過程は多い。だが」  ルナールのページをめくる手が止まり、そっと本の文字をなぞる。 「初めて行う魔術が何回も失敗してめげそうになっても、続ける。そうして成功したときの達成感が好きだ。もちろん、一度成功した魔術を失敗することなどないが」  ルナールの口から「好き」という単語が出たことに不意を突かれた。きちんとした好き嫌いがこの人物にあったという事実が驚きである。 「それにお前だって、失敗したものより成功したものの方が嬉しいだろう?」  楽しそうな意地悪そうな、そんな視線を投げてくるから。自然と体が肯定する。  するとルナールは何が面白いのか、ブフッと盛大に噴き出す。 「ちょっとなんですか!なんで笑うんですか!」  なんだか嬉しくなって頷いただけだってのに。 「いや、ちょっ……くふふ、そんな阿保面、誰でも吹きだすだろ」 「阿保面……」 「口あんぐり開いて驚いた顔して……ふふはっ!!」  いやあどれだけ私の顔がツボったんですかねぇ!? ぜんっぜん笑いが収まらないようです。相変わらずだ。
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