6 有能メイドは考える

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「わぁ……!」  感嘆の言葉が口をついで出た。さらさらとインクの内側を色が流れ、だんだんと白っぽさが抜けていく。  ミルク入りの紅茶から、ミルクを抜いている状態を思い浮かべてみるといいかもしれない。 「透明になった……!」 「成功、か。こんな簡単に成功するなら、今までの失敗は何だったんだよ」  苦笑しながらも嬉しそうにするルナールは、「ん」と右手の手のひらを向けてきた。  私はハイタッチの平面バージョンかと思い、その手に自分の左手で触れる。  するとルナールは噛みつきそうな勢いで言ってきた。 「ばっ……! なにしてんだよこのチビ!」 「えっ、ハイタッチ平面バージョンかと思って。タッチしました」  ターッチと言いながらパンッ、と両手を鳴らす。 「は!? ちげーし! なに考えてんだよ! インク取り出せって意味だよ!」 「はーい」  間延びした声で返事をしながら、実験中はしまっていたインク瓶をポケットから取り出す。 「透明インクっつっても、あの様子だと紙に書けないだろう。お前のインクの三分の一くらいを透明に変えるのが賢いと思うぞ」 「ではそうします。インクですもの」 「ならそれより小さい瓶を取ってくる。待っとけ」  そうして小瓶を取り出してきた。というか、どれだけ小瓶持っているの?このヒト。  移し替えたらさっきと同じように手に持ち、魔術をかけられるのを待つ。  目を閉じ、ぶつぶつと聞こえる魔術に身をゆだねていると、ルナールの声が聞こえた。 「これは……確かに綺麗かもな」  目を開くと、手に収まっていたのは私が望んでいた透明インク。  窓から入ってくる光にかざしてみると、透き通っていて綺麗だった。  まるで色のついたガラス細工。 「ありがとう、ございます」 「ん」
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