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「わぁ……!」
感嘆の言葉が口をついで出た。さらさらとインクの内側を色が流れ、だんだんと白っぽさが抜けていく。
ミルク入りの紅茶から、ミルクを抜いている状態を思い浮かべてみるといいかもしれない。
「透明になった……!」
「成功、か。こんな簡単に成功するなら、今までの失敗は何だったんだよ」
苦笑しながらも嬉しそうにするルナールは、「ん」と右手の手のひらを向けてきた。
私はハイタッチの平面バージョンかと思い、その手に自分の左手で触れる。
するとルナールは噛みつきそうな勢いで言ってきた。
「ばっ……! なにしてんだよこのチビ!」
「えっ、ハイタッチ平面バージョンかと思って。タッチしました」
ターッチと言いながらパンッ、と両手を鳴らす。
「は!? ちげーし! なに考えてんだよ! インク取り出せって意味だよ!」
「はーい」
間延びした声で返事をしながら、実験中はしまっていたインク瓶をポケットから取り出す。
「透明インクっつっても、あの様子だと紙に書けないだろう。お前のインクの三分の一くらいを透明に変えるのが賢いと思うぞ」
「ではそうします。インクですもの」
「ならそれより小さい瓶を取ってくる。待っとけ」
そうして小瓶を取り出してきた。というか、どれだけ小瓶持っているの?このヒト。
移し替えたらさっきと同じように手に持ち、魔術をかけられるのを待つ。
目を閉じ、ぶつぶつと聞こえる魔術に身をゆだねていると、ルナールの声が聞こえた。
「これは……確かに綺麗かもな」
目を開くと、手に収まっていたのは私が望んでいた透明インク。
窓から入ってくる光にかざしてみると、透き通っていて綺麗だった。
まるで色のついたガラス細工。
「ありがとう、ございます」
「ん」
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