6 有能メイドは考える

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「……あ」 「お見掛けしたことがないので、気になっていました」 「いや、それは……」 「よければご紹介ください! ご主人様のお姿を知らないなんて、私の心が認めませんわ!」 「…………知ってどうする」 「――え?」 「知ってどうするんだ」  はっきりと意思を伝えたルナールの言葉。 「どうするって、ちょっと気になっただけです。それにお姿も見れていないし」 「なら別にいいだろう、知らなくて」  ぼそりと言われた。 「父上に話があるんだ。もういいだろう」  それだけ言い残して、すたすたと歩いて行ってしまう。  なんでだろう。ひどく傷ついたような表情(かお)をしていた。私はそんな表情をさせたくて聞いたわけじゃないのに。  記憶を封印していた禁断の扉を、不本意にも私が開けてしまったのだろうか。  長い廊下に一人取り残され、ルナールの歩いて行った方を見つめる。 「ッ……!」  荒れ狂う感情の嵐に飲み込まれそうになって、慌てて自室へ走る。  どれだけ嫌っていても、決してルナールを傷つけたいわけじゃなかった。  ただ純粋に興味本位で聞いただけだったのに。なんで傷ついた顔をするの。ねえなんで。  視界が歪んだ。喉の奥がツンとする。  なんで私も、こうなるの。  助けてよ、ソル。こういうとき、どうすればいいんだっけ……。
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