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「……あ」
「お見掛けしたことがないので、気になっていました」
「いや、それは……」
「よければご紹介ください! ご主人様のお姿を知らないなんて、私の心が認めませんわ!」
「…………知ってどうする」
「――え?」
「知ってどうするんだ」
はっきりと意思を伝えたルナールの言葉。
「どうするって、ちょっと気になっただけです。それにお姿も見れていないし」
「なら別にいいだろう、知らなくて」
ぼそりと言われた。
「父上に話があるんだ。もういいだろう」
それだけ言い残して、すたすたと歩いて行ってしまう。
なんでだろう。ひどく傷ついたような表情をしていた。私はそんな表情をさせたくて聞いたわけじゃないのに。
記憶を封印していた禁断の扉を、不本意にも私が開けてしまったのだろうか。
長い廊下に一人取り残され、ルナールの歩いて行った方を見つめる。
「ッ……!」
荒れ狂う感情の嵐に飲み込まれそうになって、慌てて自室へ走る。
どれだけ嫌っていても、決してルナールを傷つけたいわけじゃなかった。
ただ純粋に興味本位で聞いただけだったのに。なんで傷ついた顔をするの。ねえなんで。
視界が歪んだ。喉の奥がツンとする。
なんで私も、こうなるの。
助けてよ、ソル。こういうとき、どうすればいいんだっけ……。
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