6 有能メイドは考える

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 バタン!! とわざと乱暴な音を立てて自室の扉を閉める。  なんだか妙にイライラして、ビビに相談しようにもそんな気が起きない。  と、机の上に置いていた便箋が目に入った。 「あ、手紙……」  レジーナ様とレガリス様、あとソルに手紙を書こう。  万年筆を取り出して、少し迷ったけれど例のインクを取り出す。使わないのはもったいない。  三人への手紙を粛々と書く。部屋の中には、時計の秒針の音と、万年筆のカリカリとした音が響き続ける。  レジーナ様にはお料理の評判が良かったことを、レガリス様にはマグヌス領の使用人は魔法が使えるということを。ソルには主人との関係が悪くなった時、どうしているかを書いた。 「……できた」  イリスより、とソルへの手紙の文末を結んだ時には、いつの間にか窓の外が紫色に染まり始めていた。 「あ! ご夕食の準備……忘れてた!」  書き終えた便箋をポケットに突っ込み、慌てて厨房へと降りた。 「イリス! どこ行ってたのよ。お料理はできてるから、運んでいってくれる?」 「うん。ごめんね、みんなに任せっぱなしで」 「いいのよ」  どうやら、ビビたちがほとんどやってくれたようだった。ありがたい。  お料理をワゴンに乗せて食堂へと運ぶと、先客がいた。 「……こんばんは、ルナール様」 「……」  見事なまでにスルーされた。それはそうか。あの一言で傷つけてしまっただろうから。  けれど私は専属メイド。嫌われようが何だろうがお仕事はきっちり行います。 「本日のメニューはお野菜とお肉のグラタンです。お飲み物は微炭酸のお水でございます」 「……」 「おや、ルナールはもう先に席についていたのか。ではいただこうかな」  音もなく現れたベスティア様がいつの間にか席について、だんまりとしていた流れを変えてくれた。
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