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いつもは聞こえないような微かな食器の音が聞こえるほど、食堂は不自然に静まり返っていた。
「え……と、ベスティア様。お食事が終わりましたら、お手紙の確認をお願いしたいのですが……」
「おや、書けましたか。もちろんですとも」
そういうベスティア様のお皿の上には、もうほとんどお食事が残っていない。お気に召したのだろうか。そうだったら嬉しい。
優雅にナフキンで口元をぬぐい、「下げてくれますか」と、そばにいたビビに声をかける。
「見せてください」
どうぞ、と手紙を差し出すと、すらすらと読んで行った。
「問題はないですね。出しても大丈夫です。よければこちらで出しましょうか?」
「ありがとうございます!」
ポケットから宛先などを記入済みの封筒を取り出し、手早くしまう。そしてお願いします、とベスティア様へ預ける。
「確かに受け取りました。ご安心ください」
きちんと届けさせます、と微笑むと、ベスティア様は紫に染まった、少し開いていた窓へ手を伸ばした。すると、高い鳥の鳴き声が聞こえ、次の瞬間にはベスティア様の腕に、大きな鳥が止まっていた。
「ハハハ、驚いていますな。この鳥は魔獣です。合図があれば自らで移動の魔術を使い、ここまで来るように訓練されています」
これをファイ領へ、と、鳥の両足に括りつけられた袋へ封筒を入れる。
スッと腕を伸ばすと、その鳥はまた空へ飛んで行った。
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