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「ソーネチカ、長い間お世話になりました」
「うぅ……こちらこそ、イリス」
最後に挨拶したのはソルだった。彼女は大きな黄色の目からぽろぽろと涙をこぼし、ぺこりと頭を下げた。
「『ソネソネ☆チカッとダンス』、頑張るから見ててねぇ!」
「勿論。目に焼き付けるよ」
そう会話を終えると同時に、「イリス」と私を呼ぶ声がした。
「家政婦長」
「あなたは今ここにいるけど、もうすぐにマグヌス家へ行ってしまうのよね。寂しくなるわ」
「私もです」
「そろそろ出発だそうよ。用意なさいな」
カバンが右手にあるのを確認して、「ダンスのときにね」とソルに別れを告げる。
邸宅の門に出ると、家の者がそろって立っていた。なんと、使用人のトップである執事まで、そろいもそろって門の前に立っているのだ。門の横には特設舞台が作られていて、その前にソル親衛隊員たちが並んでいる。
親衛隊員たちはダンスも踊るのか。初めて知った。
「やあイリス」
「レガリス様、レジーナ様」
主人であるお二人もいらしいて、ファイ家オールスターズの完成だ。
「ソルたちが例のダンスを舞台で披露してくれるそうだ。見てやってくれ」
「もちろんです」
こくりと頷くと、レガリス様は「ソル」と舞台に立つ彼女の名を呼んだ。
「はい! いっつも元気! ソルです!」
「ソル様親衛隊員でありダンス部隊でもある、メンバー1です!」
「同じく、メンバー2です!」
「同じくメンバースリーです!」
「おい! 普通3って言うだろ! 流れ的に!」
「んなもん知らんわ!」
「ほらほら! メンバー1,メンバー3! 今日はイリスのお別れ会だから、シャキッとして!」
いつも通りのわちゃわちゃ風景。相変わらずすぎる。
「えー、イリスのお別れ会にお集まりの皆様! どーも!ソーネチカ・トナです! こんなときに自己紹介!? って思うかもだけど、私はイリスにずっと覚えててもらいいたいから、フルネームを言いました!」
ドヤっと胸を張るソルは、ちらりと私に目線を送った。ああソルかわいいね! ファンサありがとうっ!! 大好きっ!!
「私たち『ソネソネ☆チカッとダンス』ダンス部隊は、今日、過去1の出来でチカッと踊ります! みんな見ててね! 踊ってね!」
なにソネソネ☆チカッとダンス部隊って。そんなのあったんだ。
「ミュージックッ! スタート!」
ソルの掛け声に合わせ、テレレレン、とダンスの音楽が流れてきた。
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