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「マグヌス家へ出せ」
「承知いたしました」
レガリス様と御者の方のやり取りをぼんやりと聞いていたら、馬車がガタリと揺れて動き出した。
窓の外では、ソルたちが大きく手を振っている。そっと手を振り返していると、
「寂しいですか?」
レジーナ様が私を気遣ってか、声をかけてくれた。
「はい。この仕事はとても楽しかったですし、やりがいも感じていました。それに、仲良くしてくれる子もたくさんいた――。移動はやっぱり寂しく思っています」
「そうですか……。あなたには無理をさせたと思っていましたが、やはりそうでしたね。申し訳ないわ」
「いえ、そんなことはありません。ファイ家のお役に立てるならば喜んで! 立候補します!」
「そう言ってくれてうれしく思いますよ、イリス」
レジーナ様は少し安心したように口角を上げた。うん、移動は悲しいけど、この笑顔が見れてよかったです。
しばらく走っていると、景色がだんだんと変わって、山や森が多くなってきた。
ガタガタと馬車に揺られながらガタ流れる風景をガタ眺めてガタガタ……って、この馬車揺れすぎじゃない?タイヤとか外れないのかな、心配。
「レジーナ様」
「どうしました?」
「この馬車……なんだかすごく揺れませんか?」
「ああ、それは――」
「それは、ここの地形の特徴だね」
レジーナ様のお話をさえぎって教えてくれたのは、レガリス様。
「ちょっと、あなた」
「すまないねレジーナ。つい話したくなってしまって」
「もう……それで、続きをお話してくださって? まさか、ファイ領というこの国の名家の当主でありながら、国の地形については知識だけで、説明ができないなんてありえませんものねぇ?」
自分の話をさえぎられてご不満なのか、いくらか挑戦的で棘を含むレジーナ様のセリフを受け、レガリス様は「ハハハ」と笑った。
「もちろんだとも」
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