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この間と同じように、隣の男の部屋の前に傘を置いて、ママのところに戻ろうとした時、隣の男がどこかから帰って来た。
そして、赤い傘を見て
「うわーーーーーーーーーっ!」
と大きな声で叫んだ。
「やめてくれ! 勘弁してくれ!」
隣の男は叫び続けた。
そこへ怖そうな顔をした男が2人やって来て、そのうちの1人が胸ポケットからかっこいいメダルを出して見せると、隣の男に声をかけた。
「影山久信さんですね? ちょっとお話しを伺えますか?」
隣の男はまだわめき続けていて、その声で谷さんが部屋から顔を出した。
そして僕に気がついて「コウちゃん? ダメじゃない」と言って僕のところへ来ようとした。
そこへママが息を切らしながら走って帰って来て、何かぶつぶつと言い続ける隣の男と、怖そうな男2人を横目で見ながら、僕をぎゅっと抱きしめた。
隣の男はママに気がつくと、すごく怖い顔でママに言った。
「お前か? お前なのか? こんな嫌がらせしやがって!」
隣の男がママに飛びかかろうとしたところを、そばにいいた男の人たちが羽交締めにして止めた。
隣の男は両手で頭を抱え込むようにしてぶつぶつと言い続けた。
「捨てたんだ……捨てたのに、また戻ってくるんだ……遠くに捨てたのに……戻って来るんだ……」
「話は署で聞くから」
隣の男は、怖そうな男に挟まれて、アパートの前に停めてあった車に乗せられて、どこかに行ってしまった。
「コウちゃんダメでしょ……心配したんだから……」
ママは泣きながら僕のことを怒った。
谷さんがそんなママの背中をずっとさすっていた。
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