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赤い傘はお姉さんの。
どうして部屋の中に入れないで、いつも外の窓の端にかけているのかはわからないけれど、この傘がある日は、隣の部屋にお姉さんが来ている日。
いつも同じ傘だから、きっとこれはお気に入りの傘なんだ。
夜中にドンっという音で目が覚めた。
雷だ!
その後も、ドンっという音が何回もした。
ベランダ側の窓には遮光カーテンというのがかかっていて、外の光が全然見えない。
ドンって音の後、光るまでの時間で雷がどのくらいの近さで落ちてるのかがわかると、随分前にママが教えてくれたけれど、真っ暗でわからなかった。
ママはどんなに大きな音で目覚ましが鳴っても起きれない。
だから雷の音なんて全然気にならないみたいで、ぐーぐー寝ている。
僕は少し怖くなって、ママの布団に潜りこんだ。
次の日の朝早く、いつものようにママと外に出ると、お姉さんの傘はなかった。
昨日の夕方にはあったのに。
今朝は僕より早く起きてお家に帰ったんだ。
ママが玄関の鍵を閉めていると、隣の男が帰って来た。
「おはようございまーす」
ママが挨拶をしたら、男は小さな声で「どうも」とだけ返事をして、部屋に入って行った。
この男が、赤い傘のお姉さんの「彼氏」というやつらしい。
ママが「私ならあんな男好きにならないわぁ」と呟いてるのを聞いたことがある。
すっごく小さい声で言ってたけど僕には聞こえてしまった。
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