或る蝸牛の災難

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或る時は同朋と横一列に並べられ、 よーい、どん! などという謎の呪文を浴びせられ ちゃんと競走してくれないー。 と、理解できぬ文句を聞かされた。 また、或る時は、様々な物がプラスチック容器の中に放り込まれ、 おうち、交換しないかなー? などと呟かれながらずっと監視されるという 理不尽な状況に身を置かざるを得なかった。 更に或る時には ナメクジって塩で縮むんでしょ? かたつむりもそうなのかな? などという恐ろしい言葉を浴びせられ、 塩などかけられなくても身が縮む思いをした。 やっと寛いでいる時でさえ、急に指先で無遠慮にか(つつ)かれ、驚き急いで殻の中に(こも)る事は日に何度も繰り返された。 このような日々が幾度積み重なったのであろうか。 ついに、その時が来たのである。
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