3人が本棚に入れています
本棚に追加
もうそろそろ逃がしてやろうか。
昨日雨だったから、丁度いいだろう。
うん。また捕まえればいいしね!
…。帽子にはもう入れないでよね。
あと、数を考えろ。あんなんいたら流石に引くわ。
次は塩かけてもいい?
やめたげて!
相変わらず姦しい家族である。
ぼたびたべちゃっ。
だーかーらー!もうちょい優しく出したれよ!
殻潰れたらかわいそうやんか!
内臓入ってるんだってよ?
めっちゃ交通事故じゃん!
内臓?!見たい!
…。カラつぶれたやついたら、塩かけてもいい?
だから、やめたげてっ!
!!!
恐ろしや、怖ろしや。
今は縮こまっている場合ではない。
一刻も早くこの場から逃げ去らねば。
雨上がりの湿った土の上を進み、濡れた葉の上に乗り上げる。
如何せん、某は蝸牛。速くは動けぬが、今は必死である。某の中では光の速さともあろうかと思うほど急いでいるのだ。これでも。
ぬめぬめと進みながら、某は想いを馳せる。
二度とあの様な目に遭うのは御免で或る。
正に九死に一生。
途轍もない災難であった。
くわばら、くわばら。
ややその場から離れ、
透明なプラスチック越しではない光と風を浴びて。
某はやっと安堵したのだった。
完
最初のコメントを投稿しよう!