第一章

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  *  自分一人だけが生き残った。  愛していた家族も、一緒に住んでいた恋人も、住んでいた町そのもの……すべてを壊された。  町に火をつけられると、仲間の悲鳴と皮膚の焼ける臭いが嫌でも鼻に届く。  喧騒に包まれる中、私の体は微塵も動かない。  やがて町だったものは静かになる。  終わった?  そう思ったところで私はついに見つかってしまう。それでも体はいうことを聞かず、声すらも出なかった。  そんな状態の中、無抵抗に弄ばれる。  皮膚がゆっくりとじっくりと、わざと時間を掛けて裂かれていく感触。関節を逆方向に曲げられ、挙句砕かれる時の音。用済みになった部位は残酷に、途中まで切断されていく。ここまでくれば切り離してくれたほうがいいのに、何を考えているのか残されてしまう。  こんな拷問を受けてようやく悲鳴をあげることができた。熱い大粒の涙を流すことができた。やっと自分はまだ生きていると実感できた。  でも、それは奴らをただ悪戯に喜ばせるだけ。  生命というものは立派だ。何故ならば、そんな状態になってもなお気絶することすらできない、死ぬことすらできないのだから。生きよう、生きようと私の意志とは関係なく体が勝手に耐えようとする。  奴らは私への拷問を満足すると町を去っていった。  惨たらしく傷つけられた私にできることはもはやない。 顎を砕かれ、舌を噛み千切ることすらできない。ナイフで自分の心臓を刺そうとすることも、崖から飛び降りようとも、そもそも身体が動かないために何をすることも許されない。  涙はとうに枯れ、哀しむことすらもできない。光の無い真っ黒な眼差しは床を見つめるだけ。代り映えの無い景色、眠ることすらもできなかった。   *
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