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「……リテ! エルリテ!」
名前を呼ばれている。それも必死な声で。
まだ重たい瞼を擦る。ぼやけていた視界も段々ハッキリとしてくる。
暗い部屋には小さな明かりが一つ。床に倒れてそれから意識が遠のいて……そのはずなのに今は自分のベッドにいるようだ。
そして、私の隣には今にでも泣きそうなイアラの姿があった。
「寝ていたのか……私は……?」
「良かった……生きてた」
不意に抱きしめられると、私の頬には無抵抗に涙が伝う。
怖い夢でも見ているようだった。
やっぱり孤独に耐えきれなかったのだろうか。体を通して感じるイアラの温もりが私を安心させる。
「今は……何時だ?」
「二十時過ぎだよ」
「そうか、だから暗いのか。私は結構……眠っていたのだな」
イアラは不思議そうな表情で私の顔を覗き込んでくる。
「おいおい、エルリテ。半日ぐらい眠ってたと思ってんの?」
「……どういうことだ? 私はそう認識しているが」
「三日間。三日間も眠ってた」
実感がないせいで上手くその言葉を飲み込めない。気持ち的には少し眠ったぐらいだが、イアラの表情と私の認識のズレからすると本当に三日間も眠っていたのだろう。
そして、そう言われたからか体の違和感に気付く。
確かにいつもよりも体が重たい。そして非常に喉が渇いている。風邪を引いた時のような気怠さが全身を蝕んでいる。
「そうか、そんなに眠っていたのか」
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