第二章

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 この状況で奴はいったい何をしてくる。これから何をされる。抵抗しようにも手も足も使えない。考えろ……何かやれることはないか。 「そう身構えなくても大丈夫ですよ」  彼は不敵に笑うと、持ってきていた布で吐瀉物を拭き取る。こういうことに慣れているのか触ることに抵抗なく処理していく。 「よくあることです」  手慣れている……こういう状況を何度も経験している?  そういえば奴は最初に言っていた。私の買い手だと。何度か異種族を買っては世話をしたことがあるのか。  まるで物だ。私の意思なんて関係ない。イアラは私を売り、山耳族を裏切った……それは間違いなく事実。 「貴様は何者なのだ」 「僕は武器商をしながら同時に開発もしています。そして、異種族の研究もやっています」 「ならば私をどうするつもりだ。解剖でもするつもりか」 「追々はそのつもりです」  彼はこれからのことを考えているのか、楽しそうな声色で言う。解剖する……冗談で言ったつもりだが、彼ならば本当にやりかねない。そうやって殺された者が何人いるのか。  早いこと逃げる手段を見つけなければ殺されてしまう。生きてここを出て、山耳族の村がどうなったのか確認しなければならない。父、母はどうなった? 助かったのか……いや父のことだ。きっと上手くやってくれたに違いない。  村のことは大丈夫だと信じておこう。今は自分が助かることを考えよう。 「ですが安心してください。しばらくは何もしません。私もやることが多いので」 「ならば早く解放しろ。条件があるのならば飲む。そもそもなぜ私なのだ、山耳族に何の用があるのだ」 「イアラ君から聞きませんでしたか?」  禁断の果実があるから……イアラは確かに言っていた。  私からすれば空想の産物。他の種族にどのように伝わっているかは分からないが、何故そこまでして求める? 「どうやら知っている、知って当然といった表情ですね」 「知っているが……それだけだ。詳しい場所は知らん。見たこともない」 「そうですか。イアラ君からこのような物を頂いたので、心当たりがあるのではないかと」 「それは……!」  ヴィレンスが取り出したのは私が右耳にしていた果実のピアスに間違いない。
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