第二章

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「ほとんどイアラ君が教えてくれた情報と同じか」 「嘘偽りはない」  それ以上に知っていることなんて何一つなかった。不明なことがあるとすれば、私のしていたピアス……これがいったい何なのか。  ヴィレンスがどこか納得していない様子なのは一目見るだけで分かる。私の情報に失望したのか、それともただ残念がっているだけなのか……彼の目つきは変わり、獲物を見るように鋭く睨み付けてくる。 「選択肢を与えると言いましたが、アナタは山耳族を救いたいですか? それともアナタが犠牲になりますか?」  待て、山耳族を救いたいかだと? 彼の口ぶりからすると、山耳族はまだ滅んでいない。もしくは襲撃したものの、まだ手を出していない? それかイアラから聞いて守り手である私だけを捕まえたのか?  これもまた淡い期待なのか……? でも、もし微かな希望だとしたら……。 「決まっている、私が犠牲になる」 「わかりました。ではこれを飲んでいただきましょう」  ヴィレンスはグラスに液体を注ぎ始める。  それは私が想像していた透き通った水とはまるで違うものだった。 「これは僕の血液です」 「なに……?」  グラス一杯分、注がれたのは赤黒くサラサラとした液体。  私はヴィレンスの言っていることを理解したくなかった。当たり前だが、血液なんて口にしたことはない。怪我をした時に嗅いだことのある鉄のような臭い、もしそれを口にしたら……味を想像するだけで吐き気がする。いくら喉が渇いていると言っても、血を飲むなんてことは絶対にしたくない。  それにあの血液は奴のものだと言った。余計に気持ちが悪い。 「言葉には責任が付きます。それを証明してください」 「まっ、待て。一つ質問させてくれ」 「……いいでしょう」 「貴様は山耳族を救いたいかと問うたな。山耳族はまだ滅んでいないのか? 私以外にも生き残りはいる、村にも手を出していないのだな?」  ヴィレンスはわざとらしく不気味な笑みを浮かべると、考えるような素振りを見せる。襲撃したのは奴等なのだ、答えなんてすぐに出るはずなのに、私をわざと怒らせたいように時間を掛けている。
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