第一章

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「裸の一つって……私はこれでも女だぞ。気が強い自覚はあるし、山耳族にしてはキツイ性格なのも理解している。それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのだ馬鹿」  そう言いながらも湖での出来事が脳裏を過る。胸は隠していたが裸を見られたことに変わりはない。あの男も「覗く気はなかった」と言っていたが、私のことを確かに見ていた。あの時は人間を目の前にして動揺していたし気にしていなかったが、今になって頬が赤くなっているのが分かる。  一日に二度、しかもこの短時間で自分の裸を見られるなんて……これもあの悪夢のせいだ。 「いや何もそこまでは言ってないし。それにエルリテのことはしっかり女性として見ている。どっちかと言えば綺麗で美しい。その性格はキツイというか凛々しくてカッコイイし……」  イアラは私の顔をしっかりと見ながら言葉を紡ぐことを止めない。そう眩しい眼で直視しながら褒め言葉を羅列されると、私の頬は熱くなる一方で口を挟むことができない。  私よりも長い背中まで伸びた綺麗な金髪、柔らかな目つき、ハッキリとものを言う性格……イアラは太陽のような男だ。私なんかよりも良いところが沢山ある。それを伝えるには抵抗があるというか、面と向かって伝えるのはどうも恥ずかしいのだ。  でも、彼と夫婦になれることは嬉しい。デリカシーはないし、よく喋るし鬱陶しいと思うこともある。それでも、イアラとの空間は好きだ。最悪な夢のせいでもあるが一人でいるとすぐに暗い気持ちになるし、知っている者が傍にいてくれるのは心強い。  村で決められた結婚ではあるものの、イアラが選ばれた時に私は安心した。 「山耳族の結婚は意思が尊重されるというより、種の存続が目的らしいじゃん。だから、俺とエルリテが選ばれるなんて思ってもいなかったよ。本当に嬉しい」 「イアラ……恥ずかしくなるようなことを私の瞳を見ながら言うな」 「あっ、照れてる。俺は本心を言ったまでなんだけどなぁ」 「それよりも、私に用事があったから来たのではないか?」  ようやく話を遮ることができた。イアラも思い出したのか今度は真剣な声色で話し出す。 「そうそう、エルリテは山頂の果実の話を知ってるか?」
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