第三章

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「ははっ、こんな所にいやがったか」 「なっ……」  振り返るとホルドがいた。その分厚い鎧からは想像もできないが、あの細い道を通ってきたとでもいうのか。今度は両手に戦斧を持ち、戦闘の体勢を構えている。  私はすぐに立ち上がるも、男はすぐに斧を振りかざした。私は先ほどと同じようにバックステップで避けるも、足に力が入っていないせいで体勢を崩して尻餅をついてしまう。 「街に慣れてない奴はみんなここに逃げ込むんだよなぁ。逃げ切れたと思って油断するが、俺様から言わせてみれば袋のネズミ。そんな奴は決まって異種族なんだよなぁ!!」  ホルドはもう一度、戦斧を振るう。咄嗟に身を引いて躱すことはできたが、その風圧でフードがめくれてしまう。 「ほぉら、やっぱり異種族だ……んっ? コイツの耳……山耳族とは大当たりじゃねーか!! じゃあ早速だが果実の在りかを吐いてもらおうかなぁ!!」 「クソッ……もうダメか……」  立ち上がるまでの猶予はもはやない。奴はその大きな斧を力でぶん回している割に次の一手までが速い。それだけ力があり、この武器を使いこなしているのだろう。  過呼吸も相まって、心臓の鼓動が早くなる。こんなことになるなら、無理を言ってでも体を慣らしておくべきだった。  次の攻撃が放たれる。私は深呼吸をして目を閉じる。  今度こそ死ぬのだろうか……? 「まったく。世話をかけさせる」 「らっ、ラヴァル……?」  目を開けるとラヴァルが私の前に立ち、ホルドの戦斧を握り締めていた。 「おいおい、ラヴァルじゃねーか! また正義ちゃんごっこかぁ!?」  ホルドは戦斧を戻そうとするが、ラヴァルがこれでもかと強く握っているためかその手を離れない。 「腹ががら空きだぜぇ!」  ホルドは斧から両手を放し、ラヴァルの腹を目掛けて思い切り蹴り上げる。ラヴァルはその大きな戦斧を持ったまま体が宙に浮き、ホルドは続けざま背中に踵を落とす。鎧を着ている者の動きとはまるで思えないが奴は戦い慣れている。ラヴァルは為す術がなく踏み付けられる。 「この程度で終わりかぁ? 今度はその左目を斬りつけてやろうかぁ!!」  ラヴァルは言っていた、右目の傷痕は力のない自分への戒めだと。そしてホルドのあの言いよう、コイツがラヴァルに消えない傷を負わせた男だろう。
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