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最終章
私は侵食されていく。
果実の成る大樹に取り込まれ、無限のように生命を吸い取られる。
大樹は成長を続け次々に新しい果実を宿す。
私は抵抗することもできないほど根に拘束され、体の至る所にそれらが貫通している。生命を吸収されて、その度に意識を失う。
これが果実を食べた者の最後に辿り着く場所? 果実を殺そうとした者の末路?
果実を殺してほしいと祈った。そんなことを願ったばかりにこんな仕打ちを受けているのだろうか? 早く殺してほしい。死ぬことも許されず大樹に取り込まれ、果実を作り続けるだけの肉人形。こんな生き地獄……耐えられない。
人間だろうと異種族だろうと……ここへ来てはいけない。大量の果実が成る今の大樹を見てしまったら……とんでもない争いが起きて犠牲が出る。
だからお願い……誰かがこの真相を知る前に、果実を食べた者は大樹に終止符を打ってほしい。
これ以上、誰かに見つかる前に……。
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