最終章

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  *  数日間は歩き続けた。山に着いた頃には陽が落ちて、既に辺りは真っ暗だった。  人間の街から山までは長い道のり。進んでは休憩を何度か繰り返し、ようやく山の入口へと辿り着いた。荷物は少ないとはいえ、流石にこれだけ移動していると足にくる。派手な移動をせずにとはいえ、馬でもいれば楽だったのだろうが……仕方のないことだ。  思えばイアラが人間の街に行く時もしばらく帰ってこなかったし……やっぱりそれだけ遠い場所にあるということだ。  そのおかげではあるが、この数日間で騎士団の連中に出くわすことも、禁断の果実を探す者から襲撃に遭うといったことも起きてはない。問題なく順調に歩みを進められている。  もう一つ、少しの仮眠をとっている時にでも私は頻繁に悪夢を見た。しばらく見ていなかったが再発したようだ。おかげで短時間の睡眠ですら疲労を感じてしまう。  それとは別に何者かが体験してきたことを追憶するように夢を見る。それは果実を食べてしまった者がどのような運命を辿るのか、私に伝えようとしているようだった。 「この先は危険な気配がする。私がいた時には感じたことのない血生臭いものだ」  人間の街では感じなかった雰囲気。私達の行動を読んでか、それともワザと街では隠していたか。この山の中に戦力を集中しているようで、一つだけではなく幾つもの気配が感じ取れる。 「まだ気配との距離はあるが……警戒したほうがいい。人間だけじゃない、他の種族も混ざっている。騎士団か、それとも果実を狙う異種族か……」 「こんなものだ」 「私の知らない間に随分と騒々しい場所になったのだな……」  どこか自分の知らない場所のようで物悲しいが、この山の空気の味だけは変わらない。いつもならこの空気を吸えば気持ちを落ち着かせることもできるが、今はそういうわけにはいかない。  山頂までの最短距離を頭の中で構築する。安全な道で行きたいところだが連中がいることは分かっている。危険な道を進む必要はある……だが私がいるのだから心配はいらない。 「多少進みづらい道だが問題ないな?」 「問題ない」
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