最終章

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 私はすぐに身を起こし、敵の方向へ視線を移す。 「ホルド……!」  そこにいたのは街で出会ったさすらいの騎士、ホルド・パワル。あの時とは違う新調されたヘルムに、相変わらず大きな斧を構えている。それを見ると思わず左目の傷痕が疼き、手で押さえてしまう。 「あん時に頭ごとぶった切ったと思ったのに……斬り甲斐があるってもんだ!」 「させん」  次の一振りはラヴァルが剣で受け止める。ホルドのほうが一回りデカく武器も大きいのに、ラヴァルは力負けせずに押し返す。 「ははっ、相変わらず異種族と仲良しごっこかぁ? こちとら人間様同士で仲が良いんでなぁ!! 良かったぜ、ここをずーっと張っといてよぉ」 「なにっ……放せ……!!」  私は突然、羽交い締めされる。それはホルド程ではないが私よりかは大きな騎士の姿。力で振り解こうとするも微動せず、絞め上げる力を強められてしまう。ゴテゴテした鎧は当然固く余計に痛みを感じ、思わず声が出てしまう。  辺りを見渡すと私達を囲むようにして騎士……いやもはや荒くれ者の人間共が沢山いた。数的で言えばどこからどう見ても私達が不利な状況。 「貴様……それでも騎士か」 「異種族と仲良くして人間様に危害を加えるテメェこそ騎士か、あぁ? おら、ラヴァルさんよぉ、テメェの首を落とさない限りあの山耳族は痛い目を見るぜ!! おら、やれ!!」 「クッ……」  ラヴァルは私を助けようと動こうとしたが、ホルドの取り巻きが一斉に剣を振りかざす。ラヴァルはその複数人の攻撃を剣で受け止め、躱していくもその先にはホルドの大きな戦斧が待ち構えている。 「ラヴァル!!」 「おいおい、自分の心配しろよ!!」 「ぐっあっ……!」  私は身動きもとれない状況で無抵抗な腹に拳を打ち込まれる。メリメリと音を立てて、まるで内臓まで伝わっているではないかと錯覚するほどの衝撃。口からは唾液が吐き出され、悶えてしまうほどの痛みが襲いかかってくる。  男達はただ理由のない暴力を躊躇いもなく続け、下品な笑い声で喚く。でも反撃に転じることのできない私にはそれを耐えることしかできなかった。確かに痛いが、私はもっと痛いことを経験しているし、精神を蝕むような恐ろしさをこの人間共からは感じない。
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