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だから、私は耐えられる。それにローブが攻撃を多少和らげているのか案外平気だ。
「ラヴァル……私は問題ない……。だから貴様の力を見せつけてやれ……!!」
「そんな奇跡があるかぁ? もう既に必至だろこの人数差はよぉ!!」
「こんなもの……」
ラヴァルは攻撃を弾き、受け流し、なんとか捌いている。それでも手数の多さに徐々に追い詰められている。一人で戦えているのはラヴァルだからこそだが、ホルドの言うように人数差はどうしても巻き返せない。
どれだけ倒しても、捌いてもラヴァルへの攻撃の手は休まらない。体力の消費に集中を切らしてはいけないこの状況でラヴァルは必死に耐えているのだ。
「おぉらよ!!」
「ぐっ……!」
ホルドの振りかざした一撃がラヴァルの剣を弾き、その衝撃のあまりラヴァルは膝を着いてしまう。
「ガキの頃から正義感だけは一丁前……そいつももう終わりだなぁ!! 死に晒せ裏切りの騎士さんよぉ!!」
「やめろ!!!!」
私の声が虚しく山中に響く。こんな形で終わりだというのか……? こんなクズ共に……ラヴァルが殺されるのか……?
嫌だ。約束したではないか……。共に果実を食べた罪を滅ぼすと。それがこんな形で、こんな奴らに阻止されて終わるというのか……?
例え治癒能力があったとしても首を刎ねられて生きているとは思えない。ホルドが斧を振り上げたその時、私は思わず目を閉じてしまう。
また大事な者が私の前から消える……。追憶で見た景色のように次から次に自分を知る者が命を落としていく。そんな現実から目を背けたくなってしまった。
「なにっ。なんだぁ、コレはよぉ?」
ホルドの困惑する声が耳に届くと右目を開く。するとホルドの腕の関節部には弓が刺さっていた。それはラヴァルの装備しているクロスボウとは違い、もっと私が使うような物に似ている。
私が使うような物だと……?
ふと、懐かしい匂いが微かに届く。山耳族が嗜好する山頂で採取できる花の香り、何度も嗅いだことのある香水。私は思い込んでいただけで、まさか山耳族にはまだ生き残りがいるのか……?
暗闇の中、無数の弓が人間共を次々と正確に撃ち抜いていく。私を押さえつけていた騎士もその腕をようやく離した。
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