最終章

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 距離が離れるとラヴァルはボウガンを取り出そうとした……だがヴィレンスのほうが早かった。ラヴァルの手の甲は既に拳銃で撃ち抜かれていた。 「あの時はこの銃を使うことなく終わってしまったのですが……それでよかったのかもしれません。今回は特別製なので」  手の甲にできた傷口は閉じることなく血が噴き出す。私に見せた時のような繊維が動き傷口を塞ごうという気配がない。 「言ったでしょう? これは特別製なのです。僕がお人形ちゃんの血液から果実の成分を抽出して研究をしました。そしてこの大樹のもとで理解が深まった結果……禁断の果実の能力を打ち消すことが可能だと。それで作り上げた物がこの弾です」 「聞いてもいないことを」  ラヴァルは痛みも気にしない様子でヴィレンスに駆ける。そして、剣を右手に構えるが……ヴィレンスはラヴァルの右肩を撃ち抜く。手に持っていた剣は力無く地面へ落ち、ラヴァル自身も膝を着いてしまう。 「いえ、僕が勝手に話していることです。この弾もまだそう多くは作れていないので無駄撃ちはできませんが……これだけ効き目があるのならば開発に成功したと言えるでしょう」 「ぐっ……!」  立ち上がろうとするラヴァルの両膝にも、その特別製の弾が撃ち込まれる。ラヴァルは地面に這いつくばり、左腕を伸ばそうとするもヴィレンスは無慈悲にもラヴァルの顔を踏みつける。そして、見下すようにして笑顔を覗かせる。 「人間なのに、ここまで精神が強く最後まで手を伸ばす者なんてアナタぐらいですよ。このまま果実を食べた貴重なサンプルとして、これからの研究に利用しましょう」 「その足を離せ……!」 「おや、お人形ちゃん。こうして拘束されていない状態で僕と対峙するのは初めてですね」  私は自分の恐怖心を殺し、ヴィレンスの前に立つ。大事な者がここまで痛めつけられないと動けない自分の体が嫌いだ。  右の三白眼が奴の深紅の瞳を捉える。  あんな拷問を受け、精神的に蝕まれ、死んだほうがマシだと思わされるぐらいのことをされたのだ。そう簡単に奴への認識が変わることはない。でも、今は手も足も使えるのだ。今度こそ奴をこの手に仕留めることができる。  私はいつでも動けるように恐怖心を抑え、闘争心を呼び起こす。父、母、山耳族のみんな……私は今度こそ自分の役目を果たす。 「貴様がいなければこの村は平和だった。いや、違うな。貴様も果実に狂わされた哀れな存在か」 「そうかもしれませんね。もっと言えば、僕は元から狂わされていたのです。親に売られ人間に消えない傷痕を無数につけられて……だから僕は愛し方を覚えた。そのためにはアナタが必要なのです」
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