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山耳族は静かでそこまで行動的ではない。活発に狩に出るような種族でもないため、食べる物も野菜や魚がメインで肉は口にしない。それこそ自分達から他種族に姿を見せるようなこともない……湖のことは事故として。
山頂でただ静かに平和に暮らしていきたいだけの種族が私達だ。
でもイアラは違う。活発的すぎるのだ。いつだって気になったことに首を突っ込んでいく。
それこそイアラはよく他種族の物を村へと持ち帰ってくる。それも特に危険な人間の作った物が多い。珍しさから村人達は喜んでいるが、それはイアラが同族だから何も疑わずに信頼しているに過ぎない。しかし、私からしてみればそれは怪しいと思える行動だ。
山耳族に限らず他種族というだけで酷い扱いをされる世の中。それなのに山を下りて、わざわざ他種族に接触して……私が気にしすぎているのだろうか?
私は一つ溜息をこぼすと、イアラの顔を見る。
「私達は夫婦になるのだ。危険なことだけはしないでくれ」
「分かってるよ。いつだって無茶なことはしない主義でね」
イアラは満面の笑みであっさりと言う。
どうも私はこの屈託のない笑顔が苦手だ。ここまで気にしている私のほうがおかしいように思えてくる。今の今だってイアラのことを考えていたのに、どうでもよくなってしまう。
私が彼を好きだから、甘やかしているのだろうか? 本当はもっとキツく言うべきなのだろうか? そんな疑問符がまた浮かんでくる。
「また難しい顔してる。疲れてるエルリテ?」
「そうかもしれんな。まったく誰かのせいで……悩みが止まん」
「ははっ。でもスリルがあると楽しいよ。なんというか、山耳族は静かすぎるんだよね。もっと俺みたいに外を知ったほうがいいと思うけど」
「そういうものか? 私は争いなく静かに暮らせればそれでいいのだがな」
私とイアラは真逆の性格だ。
だからイマイチ彼の考えが分からない。逆に言えば彼だって私のことを理解できていないのだろうが。
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