第一章

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 これから夫婦になるというのに、こんな調子で良いのだろうか? そんなことを思っていると段々と疲れてきた。 「よし、エルリテをこれ以上疲れさせてもいけないし、そろそろ帰る」 「あぁ、そうしてくれ。口酸っぱく言っているが、これから結婚なのだ。あんまり危険なことはしないでくれ」  イアラは一瞬考える素振りを見せて、口角を上げ頷いた。やっと分かってくれたのかと私も胸を撫でおろす。  嵐のように去っていったと思えば、今度は部屋の静けさにすぐ孤独を感じる。彼が来るといつもこれだ。私は自分が思っているよりも心が弱いのかもしれない。  イアラのせいでいつも悩まされるのは本当だが、それは彼を心配しているからだ。 「まったく嫌になる……んっ? ピアスがない」  鏡で自分の顔を見ている時に外したピアスがどこにも見当たらない。イアラが急に入ってくるものだから、慌ててどこかにやってしまったのだろうか? 「私はいつ頃からあのピアスをしていた?」  ふとピアスのことを考える。いつ手にして、いつから身に付けていたのか。自分の目つきを気にして母か父に相談した時にでももらった……もしくはイアラがプレゼントしてくれたか?  深層へ潜ろうとすればするほど記憶に靄がかかる。  そして急激に疲労を感じると、視界までもがぼやけてきた。まだ目覚めてからそれほど時間は経っていない、別に眠いというわけでもない。 「ピアスを探さなければ……」  やることはある。それなのに、思うように体が動かない。  次第に力も抜けていき、うつ伏せに倒れてしまう。瞼が重くなる、私の世界からは光が無くなった。
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