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「お、やっと頷いたな」
そういった途端、シルヴァンは安心したようにふわりと微笑む。
(あ、その笑顔は反則でしょ……)
不覚にも、セレスティアはそう思った。
普段は無表情か顔を顰めているシルヴァンが、ふとした瞬間に見せる柔らかい笑みには、いつもドキッとしてしまうのだ。ここ数年は、親の顔より見た仏頂面なのに。
「ま、まあ、そうでもしなきゃシルヴァンが納得しないでしょうし、仕方なく頷いただけですから!」
セレスティアが口早にそう言った途端、街に朝の鐘の音が鳴り響いた。セレスティアは慌ててソーセージを口に突っ込んだ。
「あら、もうこんな時間?」
シルヴァンは一応エリート官僚という立場であり、王城に務める文官は始業時間が決められている。この鐘の音は、就業時間が近づいている合図である。つまり、シルヴァンはそろそろ王城に向かわなければならない。
「大変! そろそろお暇しなくちゃよね」
「あっ、おい!」
「おいしいブランチをありがとう。お見送りは結構よ」
友人の忙しい朝をこれ以上邪魔するわけにもいかないと、セレスティアはなにか言いたげなシルヴァンを置いて、すたこらさっさとマケナリー家のタウンハウスを退出したのだった。
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