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ルーザートン侯爵家
数日後、ルーザートン侯爵家のタウンハウスのリビングでくつろいでいたセレスティアの元に、レイモンドから「婚約破棄したい」という旨の手紙が届いた。
その手紙には、長年婚約関係にあったセレスティアへの感謝の言葉と、何か困りごとがあれば相談してほしい、ということが綴られていた。
「ゲームと違って、皆の前で断罪されなかっただけ、マシだったのかしら……」
窓から入ってきた春の日差しに、整った字たちが照らされている。王子の息遣いさえ聞こえてきそうな優しい言葉たちに、心がずくりと痛んだ。
(レイモンド様のこういう優しいところ、好きだったな……)
失恋する前の悪役令嬢セレスティアなら、この手紙を受け取って「こんなに優しい言葉をかけてくれるなんて、まだチャンスがあるのでは!?」と期待してしまうだろう。
しかし、失恋をしたあの夜から、セレスティアのレイモンドへの恋心はあっという間に萎んでいった。ゲームも終盤となり、悪役令嬢セレスティアの役割を終えたため、世界のシステムがセレスティアの心に多少作用したのかもしれない。
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