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結局、シルヴァンには一夜の過ちを犯して以来、一度も顔を合わせていない。責任を取る、という言葉の真意も聞かずじまいだ。律儀なシルヴァンのことだから、約束を反故にすることはないだろう。どうせまとまった金を渡すとか、あの艶やかな黒髪を坊主にするとか、その程度のことだろうとセレスティアは考えていた。
「あーあ、どうせならいい縁談でも持ってきてくれないかしら。そうでなきゃ、修道院に行くのもありよね」
ソファの上で伸びをしながらそう呟いたその時、突然自室のドアを忙しなく叩く音がした。
「お嬢様! お嬢様! お客様ですよ!」
「えっ!?」
「お嬢様のご友人の方が、何やら話があると……」
「ええっ、私の友人!? 誰なの!?」
思い当たる節がなく、セレスティアは真面目に首をひねったのもつかの間、ガチャリとドアを開き、困り顔のメイド後ろから背の高い人物がひょっこり顔を出す。そこにいたのは、大輪の花束を抱えた、マケナリー家嫡男のシルヴァンだった。
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