19人が本棚に入れています
本棚に追加
(いやいやいやいやいや)
真っ赤な嘘だ。なんだそれは、誰の話だ、とセレスティアは呆然とする。しかし、話の途中で織り込まれるエピソードは嘘ではないが真実でもない、という微妙なラインを攻めている。
セレスティアの両親はといえば、シルヴァンの巧みな話術にのまれ、すっかり感動した様子で手を胸の前で組んでいる。
「まあ、そんなにもうちのセレスティアを思ってくれる人がいるなんて」
「あのろくでな……コホン、レイモンド殿下に婚約破棄を言い渡された時は、どうしてやろうかと思いましたが、貴方のような方であれば安心してうちのセレスティアを任せることができるかもしれない」
先ほどまで怪訝な顔をしていたのが嘘のように、セレスティアの両親はシルヴァンに好意的な眼差しを向けている。
(忘れてたわ。シルヴァンはそもそも結構優秀なキャラだったじゃない……)
ファナに対してIQ.2程度になるシルヴァンをいつも見て来たため忘れがちだが、そもそも彼はこの王国で将来を有望視される男だ。セレスティアの両親を説得する程度、赤子の手をひねるよりも簡単なのかもしれない。
シルヴァンは微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!