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「本当に、シルヴァンは理想的な婚約者様だわ。今日だって、お花をもらってしまったし……」
待ち合わせに現れた瞬間、シルヴァンは「お前に似合うと思って」と、さっと一輪の花を差し出し、セレスティアを大いに困惑させた。なんせ、セレスティアはずっとレイモンドの婚約者だったのだ。ファナに夢中だったレイモンドは、セレスティアに花などくれたことはなかった。
シルヴァンがくれた一輪の白い薔薇は、茎に小さなリボンがついていて可愛らしいものだ。セレスティアはその薔薇が枯れないようにそっとハンカチを水に湿らせ、茎の部分に巻いて大切に膝の上に置いている。
正式に婚約してからというもの、シルヴァンは人気店のお菓子から、センスの良いアクセサリーにドレスなど、事あるごとに贈り物をしてくれた。
セレスティアは眉を下げて、優雅にコーヒーを飲むシルヴァンを見つめた。
「あのね、無理して色々贈ってくれなくてもいいのよ。第一王子と婚約破棄された私の婚約者になっただけでも、ありがたいと思ってるんだから」
「俺が贈りたいんだ。気にせず受け取れ」
「そう言われても……」
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