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「婚約者に好かれたくて、俺も必死なんだ」
「か、からかわないでちょうだい……っ!」
低く、どこか危うい色気のある声に、セレスティアは顔を真っ赤にして思わず顔をそらした。
「どうした? 顔が赤いぞ」
からかうように言われ、セレスティアは頬を膨らます。
レオナルドとファナの恋愛を二人で邪魔していた時には、決してみせなかったシルヴァンの新しい一面に、セレスティアはずっと翻弄されている。
第一、長く友人だと思っていた男が、急に恋人のような態度を取ってくれば、誰だって対応に困ってしまうだろう。しかしシルヴァンはそんなセレスティアの内心など気にもとめず、余裕の表情でアイスコーヒーを飲んでいる。
セレスティアは誤魔化すようにゴクゴクとアイスティーを飲む。
やがて、シルヴァンは腕時計に視線を落とすと立ち上がった。
「さて、そろそろ行くか」
「そうね」
シルヴァンに続いて立ち上がったセレスティアは、膝の上の薔薇を大事にハンカチで包み直し、鞄にしまった。
休日の街は活気にあふれていて、多くの人が行き交っている。
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