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悪友の礼儀
セレスティアが部屋に戻ると、シルヴァンはいつもの見慣れた私服に着替えていた。あたりには食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。
「軽いものしか用意できなかったが、食べてくれ」
シルヴァンはコーヒーを注ぎながらそう言った。テーブルには、ボイルしたソーセージに、オレンジと、カリカリに焼けたバゲットが用意されている。見るからにおいしそうだ。どうやら、セレスティアが風呂に入っている間に、シルヴァンが用意してくれたらしい。
「どうもありがとう。ここまでしなくても良かったのよ」
「マケナリー侯爵家の嫡男として、客人をもてなす礼儀くらいはわきまえているつもりだ。それに……」
気まずそうな表情を浮かべながら、シルヴァンは頬を掻き、セレスティアをチラリと見た。
「お前は……その、大丈夫か?」
「大丈夫って何が?」
怪訝な顔でセレスティアが問い返せば、シルヴァンは「えー」だの「うーん」だの唸る。それから意を決したように口を開いた。
「その……俺とああいうことになったことだよ。初めてだったんだろ」
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